第30章 蜩〜ひぐらし〜
『ああ~、翔ちゃ~ん!お疲れ~!
元気??』
「うん、ごめんね~、今日はニノ、借りちゃって~」
『借りちゃって…って。ニノは俺のものでもないからね~』
相葉くんの言葉に、少しドキンとした。
『翔ちゃんの魅力に、俺たちの存在が負けないように、祈るだけだよ~』
「相葉…くん…」
彼は分かってる…
ニノがちゃんと自分たちを愛してくれている事。
余裕とか、そんなんじゃなくて…
もっとずっと深いところで繋がってる…
俺と智だって…
『大ちゃんいなくて寂しいでしょ?
いつ帰ってくるの~?』
「一週間後かな?」
『そんなにいないんだ~
淋しくなったら、家においでよ!4人で飲も♪』
「うん…ありがと…」
「じゃあね~」
ニノがそう言いながら俺の肩に持たれて来た。
『あああ~!ちょっと近過ぎじゃない~?』
「俺は、お前のものでもないんだろ~?」
『そ、そうだけどさ~…大ちゃんに悪いだろ~?』
「あ、そっ…じゃ、切るよ~?」
『ちょっ、待ってよ、ニノ~、愛して…』
「じゃあね!」
プッ…
ニノはさっさと画面から相葉くんを消した。
「いいのかよ~?」
「え〜?もう、いいからいいから…ほら、飲も飲も」
「…うん…」
それから。
俺たちはまた暫く他愛もない話をしながら時間を共有し、ニノと別れ、家に戻ったのは日を跨いだころだった。