第30章 蜩〜ひぐらし〜
………ニノは、狼狽える俺の手に、
自分の手を重ねてぎゅっと握って来た
「翔ちゃん」
「……」
「今のさ…櫻井翔の嫁を懸命に頑張ってる大野さんも好きだけど、自由に好きなこと、夢中でやってたあの人も、好きだったな~」
自由に…
夢中で…
「一回話し合ってみたら?
って言ってもさ、あの人は、今が一番だって思ってるだろうし…それならそれで、いいのかも知れないけど…
俺からしたら、ちょっともったいない気もする…かな」
「うん…だよな…」
ニノに言われたことは、俺にとって
頭をハンマーで殴られたくらいの衝撃があった。
まあ、実際殴られたことなんかないから、
どの位の痛みなのか分かんないんだけど…
「俺…どうしたら…」
その時、ニノの携帯が激しく鳴りだした。
「ったく///もう~…いい?」
「もちろん」
ニノが携帯画面をスライドさせると
相葉くんの声が…
『かずちゃ~ん?まだ翔ちゃんといるの~?』
「うん…なに?」
『何ってさ、明日休みでしょ?』
「だから~?」
『いや、だからって何って訳でもないんだけど~…
翔ちゃん、いるの~??
おーい!翔ちゃん?』
「ごめんね、騒がしくって…」
ニノが、苦笑いしながら、携帯を片手に俺の隣に移動してきた。