第30章 蜩〜ひぐらし〜
【 翔side 】
そんなこんなで。
その間にドラマも入って。
映画の役作りのためにトレーニングなんかにも、忙しく出掛けることも多くなり…
俺は、そんな智のために慣れない家事に奮闘した。
お陰で、前よりは少し腕を上げた。
少しだけだよ?
↑わざわざ言わなくてもわかってるよ…
でも、アイロンかけなんかは、
器用な彼の足元にも及ばなくて…
こっそり隠してクリーニングに出したりして…
そんな日々を過ごし、
智は話題の忍者映画のクランクインを迎えた。
スタジオに大掛かりなセットを作ったとはいっても、
やっぱり山の中や草原の撮影が多く、
泊りで家を空けることが増えた。
「えっと、これは冷凍になってるから~
後は、こっちのやつは…」
「分かった分かった!
大丈夫だって…コンビニとかスーパー行けば、何でも売ってるし、そんな何カ月もいなくなる訳でもないじゃん」
「そうだけど…」
智が、こんな風に自分の留守の間のことを心配して、
あれこれ手を回して準備するのは、
俺が何も出来ないせいだ…
俺がもっと家のこと、少しでも出来ていれば、
智はこんな風に心配しないで仕事に行けるのに…
……甘えすぎてたんだな、俺…
改めて気付いて苦笑う
「何?翔ちゃん。なんか可笑しい?」
智が気付いて、俺の顔を覗き込んできた。
「え~?いや、智が留守の間、
ちょうどいい機会だから、
料理でもしようかな~っと思って♪」
「………(´・ω・)」
何だよ?
俺が♪オンプ着けて、張り切ってるとこ見せたのに、そんな眉毛下げなくたって…(*´з`)