第30章 蜩〜ひぐらし〜
「智…」
「…うん…」
「いつもいつも俺のこと、色々やってくれてありがとう。
俺のことっていうか、俺の世話だね、最早…」
「翔ちゃん…」
「俺さ、智に甘えっぱなしで、これじゃいけないな、って、そう思ってたんだ。
だから、この際言うけど…気を悪くしないで聞いてね」
……しょうちゃん…
「智が、俺と結婚して、家のことやってくれるようになって…正直、マジで助かってるし、感謝してる」
だけどね…
翔ちゃんはそう言って俺の方を向き、
俺の顔を覗き込みながら、ゆっくりと言葉を選んで話した。
「俺は、大野智と結婚したけど、智に家政婦になって欲しいって思ってた訳じゃない」
家政婦なんて!
…そんなの…(;o;)
「ごめんね?言葉は違うかもしれないけど。
俺の世話をやってくれるのは有り難いよ?
だけど、それは智がやりたいことをちゃんと出来ている、っていうことが前提であって。それが足枷になって、智の自由な仕事を減らすことがあるんだとしたら。
それはもう、きつい言い方だけど、やらないで欲しい」
「…しょうちゃん…」
……あ、ヤバい///泣いちゃう…
ここで泣くのは反則なのに…
泣くことなんかないのに…
……なんでだろう?
涙が勝手に溢れてしまい、頬を濡らした。
「…智…」
翔ちゃんが、そっと俺を抱き締めてくれた。
だから、余計に泣けた。
「しょおちゃぁ〜ん(´;ω;`)」