第29章 君と紡ぐ時間
ゾロゾロ歩くと目立つので、少しずつ距離を取りながら、俺を先頭にマンションへのスロープを上がっていく。
ここを入ってしまうともう、外からは見られる心配はない。
エントランスを抜け、ペントハウス専用のエレベーターの前に並んだ。
「すげ~…想像を超える…翔くん家…」
増田がキョロキョロしながら言った。
……智、どうしてるだろう…
あの後、何も言ってこなかったけど。
玄関の前で鍵を出そうとして思いとどまる。
3人が不思議そうな顔をして俺を見ている。
小さくひとつ、肩で息をしてから、俺はチャイムを押した。
返答のない、静かなモニター。
もう3人も分かってる…中に誰か…
俺の帰りを待つ人の存在…
……ゴクリッ///
ったく、誰だよ…喉鳴らしてんの(^^;
ちょっとした緊張感が漂う中、
ガチャリ…
中からロックが解除され、ドアがゆっくりと開いた。
「ただいま」
「…おかえり」
「ええっ!」
「嘘っ!?」
「大野さん!?」
三者三様に…驚きの声を上げて固まった。
「いらっしゃい…入って~」
ほにゃんと笑顔を見せた智に小さく目配せした俺は、大きくドアを開け、
「入れよ」
と3人をわが家へ招き入れた。
「あ…はい…」
「…お邪魔します…」
「失礼しま~す…」
面白いほどに挙動不審の俺と3人を、
玄関ドアは静かに飲み込んだ。