第29章 君と紡ぐ時間
飲んで、食って、喋って…
お開きになるっていうとき。
「翔くんの家に、行ってみたいな~」
増田が言った。
えっ??俺ん家に…今日?
「おい、ダメに決まってんだろ~?
そんな事急に言ったら、アニキ、迷惑だろ!」
「じゃあ、上田くんは翔くん家、行きたくないの~?」
「…そりゃ、行きたい、けど…」
「俺は行ったことあるけどね~♪」
得意げに菊池が入ったから話はこんがらがり……
結果、タクシーに4人で乗り込むことに…
車の中で、急いで智にLINEを送る。
『ごめん、増田たちを連れて行く』
暫くすると、智から
『俺、どうすればいい?』とレスが。
少しだけ考えてから、
『そのままいつも通りにしてていいよ』そう送った。
智……
困惑してるかもしれない。
だけど……
「お前、何でアニキん家に行ってんだよ?」
「引っ越して直ぐの頃に、少しだけっすよ~♪」
「なんか自慢げなのがムカつく」
「ねえ、翔くん家って大きいの~?」
「見れば、ぶっ飛びますよ!結婚式場かと思う程のリビングだし!」
「大袈裟だわ…」
以前、風磨を連れて行ったときは、智に出掛けてもらっていた。
智がそうするって言ったのを、俺もそのまま飲んだんだ。
今思うと、智に対して酷いことしたよな…
と思う。
ふたりの家なのに…
いないことにするだなんて…
だから、今日は…
俺の決意を乗せたタクシーは、都心の喧騒を静かに滑るように走り抜け、マンションの手前で止まった。