第29章 君と紡ぐ時間
現に俺たち嵐もそうだった。
デビューしても、相葉くんには暫くの間、変な遠慮があって…上手く馴染めないでいた。
そんなとき、彼が『翔ちゃん』って…
俺のことを『ちゃん』付けで呼んだ。
ジャニーズ事務所では、先輩後輩関係なく、『くん』付けが慣わしで…
でもその『ちゃん』付けが、俺と相葉くんの溝を埋めるきっかけになった…
「…でね、翔くん…」
「あ、うんうん…それで?」
増田は、自分に責任があるんじゃないかと…
手越と一番近いところにいたはずの自分が、もっと早く彼の中に踏み込んでいければ…
結果は違っていたんじゃないか?って。
「手越は、ああいう奴だからな~…なかなか難しかったんじゃないかな~?」
「ああいう奴だけど…どうしようもない奴だけど…
あいつ…めちゃくちゃ、いい奴なんすよ…」
増田……
そうだよな…俺が、彼を見くびるようなこと…言っていい立場じゃない。
長い間、苦しい時も辛い時も、歯を食いしばって同じ方向を見てやって来た…そんな仲間なんだ…増田は…
「ごめん…」
「なんで謝るんすか?ホントに…いい奴のくせに…我儘で、自己中で…」
……いつの間にか、上田と菊池も、増田の話を聞いている。
増田は、その後も、手越のダメなところと、いいところを話し続けた。
それを聞いているだけで、彼がどんなに手越のことを好きなのか、痛いほどに伝わってくる。
増田の辛い胸の内も…
だから、俺も何だか苦しくなった…