第27章 愛しき日々よ
「この人、フェルメールってさ、
『フェルメール・ブルー』って
言われるくらいに、
青い色を好んで使ってて、
繊細な技法で、
光と影を見事に描き上げてるんだよ」
「ふ~ん...確かに、綺麗な青だよね...」
俺のウンチクに、翔ちゃんは感心しながら、
画に観入っている。
なんか、
すげー、嬉しいんですけど~(#^.^#)
手を繋いで俺たちは、
今度は赤い壁のコーナーに入った。
オランダ黄金期で活躍した画家さんたちは、
本当に色遣いが綺麗で、
何と言っても、画、そのものが緻密に、
正確に、
本当に細かく描かれている。
それこそ、木の葉っぱの一枚一枚まで、
丁寧に描かれていて...
俺の画なんて、比べ物になんないけど、
俺も、見たままを描きたいって、
思ってるから、
学びたいところでもあるんだ。
圧巻の絵画たちを、
俺の拙い解説付きで、
翔ちゃんと手を繋いでゆっくりと観た。
そして...
これも日本初公開の画。
レンブラントの代表作だ。
「この鎧がすごいと思わない?
同じ金属なのに、
持ってる盾とは、
明らかに質感が違ってて...」
興奮気味の俺に、
翔ちゃんは少し首を傾げながら、
「この人、
ギリシャ神話の戦いの女神でしょ?
なんか、っぽくないよね~顔がさ...
優しいっていうの~?」
彼の素朴な感想に、
俺はちょっと感心する。
「うん...その人は、
レンブラントの奥さんがモデルで、
彼女のこと、
凄く愛してたんだろうね~...」
そう言って笑った俺の目を、
翔ちゃんが、じっと見ている。
「...それって、俺..みたいだな..」
......戦いの女神『ベローナ』
が見ている前で...
俺たちは、磁石が引き合うように、
そっと唇を重ねた。