第20章 君が好きだから
彼は、
副社長の顔をじっと見ていたが、
意を決したように、口を開いた。
「付き合っているのは、
真実です。
一緒に暮らしています..」
「あなたね...」
「でも、同性愛者という訳では、
ありません。」
その力強い言葉に、
彼女も黙った。
「同性が好きと言うのではなく、
大野智が、好きなんです。
男とか、女とか、そんなの関係なくて、
彼のことを、愛しています!」
真っ直ぐに言い放った彼に、
不覚にも、こんな状況なのに、
感動してしまう。
誰かに、
『俺を愛しているんだ』
なんて、言い放つ彼の言葉を、
この時初めて聞いて。
俺は、涙が溢れそうになった。
「はあぁ...」
敏腕副社長は、大きく溜息を吐いた。
「黙っていたことは、すみませんでした。
報告すべきでした。でも、決して、
いい加減な気持ちではありません。
色々なことを考えた上で、
俺は、
彼と一緒にいます。
そのことを、恥じたことも、
やましいと思ったことも、
1度もありません!!」
......もうさ...
涙が溢れて、
俺は俯くしかなかった。
彼の、
言い淀むことのない、
真っ直ぐな思いに触れて、
俺は、嬉しさでいっぱいになった。
「よく分かったわ。あなたの気持ち...
.....で?
大野、あなたはどうなの?」
急に振られて、
俺は袖で、涙を擦って彼女を見た。
その顔は、怒っているというより、
寧ろ、心配してくれる、
母親のそれだった。