第15章 おいでよ、愛しい人…
智は、風呂から出ると、
冷蔵庫からビールを出しながら、
「翔ちゃんも、飲むでしょ?」
と聞いた。
「うん...置いといて~♪」
「...分かった...」
パソコンの画面から
目を反らさないで答える俺の、
そっけない返事に、
ちょっと、淋しそうな智...
『こっちにおいで』と、
抱き寄せたい衝動を抑えて、
敢ての放置で、彼の出方を見る。
......
ソファーで、一人テレビを見ながら
ビールを飲む智を、
こっそり盗み見ながら、
マウスを動かす俺...
そんなの、どうでもいいんだけどね...
すると、意を決したように立ち上がった智は、
寝室に行ってしまった。
(うそ~!
そんなに怒んなくったって!!)
直ぐに後を追うのも、何なので、
しばらくたってから、
俺は、寝室の前まで行った。
ドアの外から、
「智~、寝ちゃったの~?」
と声を掛け、ドアを開けようとすると、
「待って!来ないで!」
焦ったような、智の返事が...
......えっ?
そんなに?
俺、そんなにあなたのこと、
怒らせちゃったの?
俺は、どうしていいのか、分からずに、
ドアの取っ手を握ったまま、
その場に立ち尽くした。