第3章 誘惑の甘い罠
怖いくらいに、
潤は何も聞いては来なかった。
聞かれたときの、
問い詰められたときの答えも、
ちゃんと用意していた。
『ニノのことが好きだから、
お前とはもう付き合えない。』
でも、
その答えを、言わなきゃいけない場面は、
遂に、訪れなかった。
その決定打として俺が打ったのは、
「翔くん」と話しかけてきた潤に、
俺が『松潤』と呼んだこと。
ずっと『潤』と呼んでいた俺が、
明らかな距離を取っていることを
はっきりさせた。
そのときの、
潤の悲しそうな顔が、
頭に焼きついて離れない。
この日も、テレビの生放送の後、
潤の前でニノが俺に声をかけた。
「翔ちゃん、この後、俺ん家行こ♪」
こんな時、逃げるようにその場からいなくなる潤が、この日は、じっと、射るような目で、俺とニノのことを見ていた。
「........」
その視線を感じ、何も言えない俺に、
ニノは指を絡めながら、甘えた声で言った。
「泊まってくでしょ?明日、取材一緒だし。」
「..あっ..うん..」
潤が、どんな思いでいるのか...、
そう考えると、
胸が締め付けられるようだった。