第14章 青空の下、キミのとなり
悪魔が見てみろと言った大きな満月は、
その表面のクレーターまでが、
はっきりと見えた。
「綺麗だね~...♪」
見上げるその横顔が、
純真無垢の子どもみたいで、
ちょっと戸惑う。
さっきのエロい悪魔と、同一人物とは
到底思えない透明な美しさで...
ともすれば、
そのまま消えてしまうんじゃないかって、
そんな錯覚に陥りそうになり、
思わず、透き通る蒼白い頬に、手を伸ばした。
「翔ちゃん。どうしたの?」
俺の手を、掴んでそのまま、自分の頬に
持っていき、
智はうっとり、目を閉じた。
「温かくて、大きな手....
こうするとね、凄く、安心する....
翔ちゃん、どこにも、行かないでね。」
.........
俺が伝えようと思っていた言葉が、
智から、こぼれでた。
「行くわけないだろ...」
そう答えた俺の声が、
鼻声だったことに、自分でもびっくりし
顔を見られたくなくて、智を抱き寄せた。
俺の背中に、しっかりと両腕を回し、
身体をくっつけて来た智。
「愛してるよ...智」
自然と、口から出た言葉に、
不覚にも涙が溢れて頬をぬらした。
恥ずかしすぎる愛の告白で、
もう彼の顔を見ることができない。
智は、俺の肩に顔をつけたまま、
何も言わなかったけど、
何度も鼻をすすっていた。
波の音が、繰り返し聞こえてくる夜の静寂の中、
蒼い月だけが、俺たちを見ていた。