第13章 ふたりなら、きっと…
今日は、歌番組の仕事で、
智と俺は、俺の車でテレビ局入りした。
「今日も頑張りますか?」
ひと声掛けて車を降りようとすると、
智は俺の腕を掴んだ。
驚く俺に、
「頑張れるおまじない、ちょーだい♪」
そう唇を突き出した。
(ここで!?)
しないと、いろいろうるさいから(経験上)
俺は、その尖った口に、
わざとらしく音を立てて、キスをした。
さっ、これでいいよね?
離れようとする俺に、
更にこのおじさんったら、
「ぎゅっ、も♪」
....ぎゅうも、じゃないでしょ!
どんだけ甘えれば気が済むの?
でも、その言葉は飲み込んで、
「ハイハイ..(ご要望通りのぎゅー❤)
...これで、いいでしょ?」
やっと、車から降りると、
彼は助手席から、動かない...
(今度は、何??)
「智、行くよ!」
車内を覗きこんでそう言うと、
「....」
「智?降りないの~?」
すると、彼は上目遣いで俺のことを見上げ、
「今さ、俺のこと、
面倒くさい奴、って思ったよね?」
「......」
いつも、彼は、
こんなちょっとしたスキンシップを
大切にする。
分かってたけど、
誰かに見られたら...っていう焦りと、
気恥ずかしさもあって、
ついついお座なりになってしまい、
結果、
更に面倒くさいことになった。