第11章 心のささくれ治すのは
心配していても仕方ない。
やるしかないんだから......
開き直って挑んだドラマの撮影。
せめて、共演者の方の迷惑にならないように。
長台詞の多い主役の俺は、
毎晩セリフを必死に覚えた。
『1度読めば、なんとなく覚えてしまう』
なんていうニノや、
『長台詞の方が、むしろ間違えない』
なんて、理解不能な智、
そんな天才たちと違って、
俺は、努力しないと、できないから。
そんな地道な努力は、次第に報われ始めて、
視聴率もよく、俺の執事役も、
まあ、そこそこの評価を得た。
そんな中。
助監督さんの勧めで、
俺は、相手役の女優さんと、
テーブルマナーの講習会を兼ねた、
銀座の高級レストランでの
イベントに参加した。
もちろん、
他のスタッフさんも何人かいたけど、
離れていたので、
俺たち二人で来ていたように思われ、
週刊誌に出た。
別に、写真を撮られたわけでもないし、
やましいこともないので、
気にしないでいた。
ドラマの番宣には、
丁度いい、くらいに思っていた。
......少なくとも、俺は。
まさか。
そこ、そんなにか~...
夜、目も合わせない智に、
俺は、少し戸惑った。
「さとし~?
ねえ、智ってば!」