第8章 君のとなりで
智くんは、じっと俺を見ていた。
その真っ直ぐな瞳に、ドキドキした。
俺も、伝えたいことは伝えた。
後は、彼が頷いてくれるのを待つだけ。
「...翔ちゃん、
同情してくれるのは、ありがたいけど...」
「同情なんかじゃない!
そりゃ、最初はそうだったのかもしれない。
でも、
今は違うよ。
俺は、智くんが必要で、
智くんには、俺が必要で。
違う?
俺の奢りなんかじゃないよね?
一緒にいてあげよう、なんて、
そんなこと思ってるわけじゃないよ。
寧ろ、俺が、お願いしてるんだ。
『ずっと、側にいて欲しい』
あなたは、『いいよ』って、
そう一言だけ、言ってくれれば、
それでいいんだ。」
俺の目を見て、
俺の話を聞いていた彼が、目を伏せて、
しばらく考えている風だったから、
俺は、その口が開かれるのを、
じっと待っていた。
どのくらいの時が、過ぎたのだろうか。
グラスのシャンパンの泡が立てる微かな音が、
次第に小さくなっていく。
時間にしたら、
きっとほんの僅かなのかもしれない。
静かに顔を上げ、
穏やかな目を俺に向けた智くん。
その揺れる瞳で、俺に話し始めたことは、
ちょっと意外な告白だった。