第7章 慟哭の夜に
車は、首都高に入った。
「どこ行くの?」
智くんが、外の景色を見ながら聞いてきた。
「横浜。ドラマのお疲れさん会やろうよ。
ふたりで。」
そう言って、ちらっと智くんを見ると、
彼は、じっと俺のことを見ていたらしく、
目が合い、
そして、
「ふふっ...ちょっと楽しみかも。」
と笑った。
夜の高速は空いていて、
俺たちは、
あっという間に横浜のホテルに到着した。
『天空のホテル』という名に相応しいそのホテルは、
港の夜景をバックに、
夜空に向かって突き刺すように伸びていた。
チェックインを済ませ、
俺たちが案内されたのは、
横浜港が一望できるスイートルーム。
その部屋の大きな窓から見える夜景は、まるで宝石箱をひっくり返したかのように美しかった。
賑やかなオモチャ箱みたいな街と、
ひとつのラインで区切られた夜の海...。
船を形作る灯りが、ゆっくりと行き交っている。
その向こうには、
幻想的に煙る工場のオレンジ。
そして、漆黒の上にそびえ立つ、
レインボーブリッジ。
そのすべてを空の上から見下ろしているような、
不思議な感覚...。
俺たちは、言葉を見つけられないまま、
暫くの間、
そのまばゆさに、見惚れていた。