第7章 慟哭の夜に
「お疲れ様」
そう一言声を掛けると、
智くんは、俺を見てニッコリ笑った。
でも、
その笑顔は、消え入りそうに、儚げだった。
「斗真も、お疲れ様。
いろいろありがとう..
お陰で、何とか、乗り切れたよ。」
「そんなことない。
大野さんの頑張りは、俺の刺激になったんだ。
一緒に出来て、よかったよ。
後は、翔くん、よろしくね。」
斗真は、俺にそう言うと、また会場に戻って行った。
「智くん、飲んでるの?」
そんなことないと思いながらも、聞く俺に、
「少しだけね..」
と笑って見せた。
あの事件以来、
彼は、お酒を受け付けなくなっていたんだ。
飲んでも、吐いてしまい、
身体も、心も拒否している感じだった。
また、みんなで楽しく飲めるように...。
彼の心に深く残る傷を、
俺が癒してやりたい。
俺はこの日、
そのための一石を投じようと思い、
準備していた。
ドラマの撮影中に動揺させたくないから、
この日を、待っていたんだ。
俺は、自分の車の助手席に智くんを乗せて、
「明日、オフでしょ?
ちょっとさ、出掛けようよ...」
と言った。
智くんは、『ん?』と言う顔で俺を見た。