第5章 嫉妬
ホイッパーやデジタル計量器、ケーキ型、回転台やパレットナイフ等、道具も充実していて何時間でも見ていられる。
というか、寧ろここに住みたいとすら思い始めた頃、
「こはるさん、俺もちょっと買いたいものあるから行ってくるね。」
と、山崎さんが食器のコーナーへと消えていった。
あまりにも夢中になりすぎて退屈させてしまっただろうか。
ふと、元彼と一緒に住み始めた頃のことを思い出した。
私の食器選びに飽き飽きした彼がイライラして家に帰ってからグジグジと文句言ってきたな、そういえば。
せっかくの非番なのに山崎さんには申し訳ないことをしてしまった。なにかお詫びをしなければ。
私は慌てて商品を選んでカートに突っ込み、レジへと並んだ。
支払いが終わってお店の前のベンチで待っていると、山崎さんが紙袋を抱えてキョロキョロしながら出てきた。
「あ、ごめんねこはるさん。お待たせ!」
山崎さんは私に気付くと笑顔で寄ってきた。
「いえ、こちらこそすみません。せっかくの非番なのに付き合わせてしまって。退屈だったでしょ?」
すると山崎さんは一瞬驚いたような顔をしたけれどすぐに笑顔を見せてくれた。
「え?全然!こはるさんが楽しそうにしてるのを見られて、俺も嬉しいし!買いたいものも買えたし、誘ってよかったよ。俺一人じゃこういうお店は入りづらいしね。」
山崎さんは、じゃあ行こうか、と私の持っていた大きな紙袋をヒョイっと抱えた。
「え、いいですよ!私が買ったのに持たせるのは申し訳ないです!」
「何言ってんの。このくらい持たせて。」
そう言うと山崎さんは私がやっと持っていた紙袋を軽々と持って歩き出した。
近藤さんや原田さんと比べて華奢だなと思っていたけれど、さすが真選組の隊士。
山崎さんもきっと見えないところで体鍛えてるんだな。
その頼もしい後ろ姿に私はついて行った。