第5章 嫉妬
山崎さんが行先を告げると、運転手は軽く頷き車を発進させた。
しばらくすると、都会的な街並みが広がり、大きなショッピングモールが見えた。
「わぁ……!」
外から見ただけでも、可愛らしい呉服店や雑貨屋、カフェや映画館まで併設されている。
「ここなら雨風気にせず楽しめるかなと思って。」
山崎さんはそう言ってニッコリと笑った。
***
「山崎さん!見て、可愛いっ!」
私たちは目的であるキッチン用品店へとやってきた。
そこには色とりどりの食器やカトラリーが並んでいて、中でも目を引いたのがお花の形をした三段重。
専用の仕切もついていて、そこにおかずを入れられるようになっている。
色合いも赤、橙、黄と食べ物の彩りを引き立てるようなもので、見ているだけでどんなおかずを入れようかと想像が膨らむ。
「本当だね。あ、ほらこれもシンプルだけどオシャレじゃない?」
「ほんとですね!可愛いー!」
山崎さんが見ていたのは真っ白な木製の三段重。
正方形だけど角が丸くなっていて洗いやすそうだ。
こういうシンプルなデザインなら和食でも洋食でもなんでも似合いそう。
花形のと迷ったけれど、こっちのシンプルなものを買うことにした。
「次は…あ、」
ふと目に付いたのは桜色のコロンとした形のマグカップ。
「ん?どうかした?」
「あ、いえ。次はケーキの型とか色々見ていいですか?」
「うん、じゃあ行こうか。」
そう言って山崎さんはカートを押してくれた。