第2章 桜色の夜
「あ、土方さんはコレが要るんでしたね。」
そう言ってこはるはマヨネーズを取り出した。
「お前………嫌じゃねぇのか。」
「え?」
「大概のやつぁ、せっかく作ったもんにマヨぶっかけられるとキレるぞ。」
それでもマヨネーズかけることはやめるつもりはないのだけれど。
そんな俺をこはるはふふっとおかしそうに笑う。
「どんなかたちであれ、『美味しい』と食べてもらえれば、それだけで私は十分嬉しいんですよ。」
そう言って笑顔を向けるこはるは、どこか寂しそうな顔をしていた。
「なぁ、1つ聞いていいか。」
「はい。なんなりと。」
「……その、なんだ、人生やり直したいって……元いたところでなんかあったのか……?」
俺を見るこはるの目が驚いたように一瞬大きく開かれ、そして伏せられる。
「あ、いや、言いたくないならいい。」
「いえ……そういう訳では無いのです。ただ、あまり面白い話ではないと思うので。」
「…そうか。」
「でも…よかったら聞いてください。」
そう言ってこはるが話し出したのは、俺からしてみれば相当酷い話だった。