第2章 桜色の夜
────午前0時。
周りがすっかり酔いつぶれ、静かになった頃、こはるは静かに立ち上がった。
こはるは酒を注ぎに来る隊士達を全て受けいれ、注がれた分を全て飲み干し、全ての隊士達に平等に酌してまわり、全員と分け隔てなく会話をしていった。
1人、また1人と潰されていく中、こはるだけがしっかりとした足取りでその場にいた。
「お前、相当飲まされてたみてぇだが……もしかして、ザルなのか?」
そう聞くと、満面の笑みで
「はい。ザルです。」
という。
「さてと…片付けてきますね。」
「いい。俺がやる。」
「じゃあ、一緒にしましょう。」
そう言って食べ終わった食器等をテキパキと片付けていく。その足取りは確かで、とてもあれだけの量のアルコールを摂取したとは思えない。
どうやら日中に山崎から台所の場所や使い方は聞いていたらしく、俺が運んだ食器を手際よく食洗機にセットし、食洗機が使えないものはサッと洗って布巾で拭いていた。
その間に俺が他の連中を部屋に帰し、動けないやつに布団をかけてまわっていると、片付け終わったこはるが戻ってきた。
「土方さん、こっちはもう終わりました。飲み直しましょ!」
その手には、片付けついでに作ったらしいつまみと徳利とお猪口が2つ乗った盆があった。
「あ、ああ……」
あれだけ飲んだのにまだ飲めるのか、というのはギリギリのところで胸の中に留めた。
俺はこはるから盆を受け取り、自室の縁側までやってきた。
こはるは俺の後ろを黙ってついてくる。
俺が腰を下ろせばこはるも隣にそっと寄り添うように座った。