第2章 桜色の夜
こはるは総悟を見て優しく微笑む。
「沖田さんは土方さんが大好きなんですね。」
そう言ってクスリと笑うと、総悟は心底気色悪そうな顔をした。
「今のがどうすりゃそう見えるんでィ。ぶち犯すぞ。」
そんな悪態つかれてもものともせず、相変わらず総悟に優しげな笑みを絶やさないこはるはまるで菩薩のよう。
「総悟、こはるさんになんてこと言うんだ!こはるさん、すみませんね。こいつ普段からこんなんなんですよ。」
近藤さんが呆れた顔をすれば、こはるは笑顔で首を横に振る。
「いえ。今まで出会ったことないタイプなので見てて面白いです。」
「いやあ、ははは!まぁ、こんなヤツでも根は良いやつですから可愛がってやってください。さ、どうぞ!」
近藤さんは豪快に笑いながらこはるに酌をする。
「ありがとうございます。いただきます。」
それをクイッと一気に飲み干し、自分も徳利を持って近藤さんに酌をする。
「いやぁ、これはこれは!」
こはるからついでもらった酒を美味しそうに飲み干す近藤さん。
すると、こはるが突然振り返り、
「土方さんは飲まないのですか?」
「いや、今はいい。どうせ最後コイツらの面倒見なきゃならねぇからな。」
こはるは一瞬、寂しそうな顔をするが、すぐに笑顔になり、俺のところに来ると、
「じゃあ、全部片付いたら後で飲み直しましょ。」
と、耳元で囁いた。
アルコールの匂いに混じって桜の香りがふわりと漂う。
そのときのいたずらっ子のような笑みが妙に色っぽくて心臓がドキッとした。