第2章 桜色の夜
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土方さんに言われ風呂敷の結び目を解き、中を見ると、淡い黄色に桜の模様が入った着物と椿油と良い香りのする小さな丸い缶、そして細長い木箱があった。
小さな丸い缶を開けると、桜の花の良い香りがふわっと広がる。練り香水だ。
細長い木箱を開けると、桜の模様が入った蜻蛉玉に繊細な金細工が揺れる簪。
箱から取り出して陽の光に当てると反射してキラキラと輝いて見えた。
しかし、簪なんて使ったことがない。
簪を握ったまま眺めていると、
「貸してみろ。」
土方さんにそう言われて簪を差し出す。
「後ろ向け。」
言われるまま土方さんに背を向けると、髪を襟足のすぐ上辺りに手ぐしで纏めて簪で止めてくれた。
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簪を陽の光に翳し眺めながら嬉しそうに微笑むこはるからそれを受け取り後ろを向かせ、髪を結ってやることにした。
椿油を少しだけ掌に出し、しっかりと伸ばしてから髪に触れる。
艶のある長い髪は想像していた通り柔らかく、持ち上げると、ふわっとシャンプーの良い香りが広がった。
手ぐしで丁寧に纏めて簪を挿してやる。
「できたぞ。」
こはるは俺の方に向き直ると、簪の存在を左手で確かめるように触れ、照れたように笑った。
「ありがとうございます。」
こはるの動きに合わせて揺れる金細工がシャランと微かに音を立てた。