第1章 プロローグ
その後、土方さんが財布から諭吉さんを数人取り出し、山崎さんに渡しながら、私の日用品を揃えてこいと命じた。
「それじゃ、行くか!」
そう言って近藤さんが部屋を出て行くと、後を追うように土方さんと沖田さんも出て行った。
「じゃあ、俺らも行きましょうか。」
3人の後について山崎さんと私も部屋を出る。
玄関でパンプスを履こうと前屈みになっていると、背中に何かを掛けられた。
見ると、それは土方さんの上着だった。
「その格好じゃまだ寒いだろ。それ着ていけ。」
「あ、ありがとうございます。」
きっと屈んだとき胸元が見えていたのだろう。土方さんの上着からはタバコの匂いに混じって、少し優しい匂いがした。
「坂田さん、お世話になりました。」
振り返り、見送りに来てくれた坂田さんにお礼を言い頭を下げると、後ろから神楽ちゃんと新八くんも顔を覗かせた。
「まぁなんだ、またいつでも遊びに来いや。飯、美味かった。ありがとな。」
「ご馳走様でした。」
「こはるちゃん、また来てヨ。私またこはるちゃんのご飯食べたいネ。」
「うん…!ありがとう。あ、そうだ、坂田さん、これよかったら。」
私は抱えていた一升瓶を坂田さんに差し出した。
「これ、こはるちゃんが飲むんじゃねえの?」
「そのつもりでしたけど、今日のお礼に受け取ってください。落ち着いたらまた遊びに行きますね。」
「お礼って…んな大したことしてねぇよ俺ァ。まぁでも…ありがとな。」
そう言って坂田さんは一升瓶を受け取ってくれた。