第1章 プロローグ
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だし巻き玉子もお味噌汁もなかなかに好評で、近藤さんからも「毎日食べたい」と言われ、真選組でしばらくお世話になることになった。
「とりあえず必要最低限のモンは買っとかなきゃな。」
そう言って土方さんが携帯でどこかへ連絡する。
「……ああ、1台でいい。万事屋に頼む。」
その様子を見た坂田さんはニヤリと笑い、
「多串くぅ〜ん。なんか渋ってた割には案外乗り気じゃない?」
そう言って土方さんを煽る。
「ばっ!そんなんじゃねえよ!つーか多串じゃねェ!!」
「またまたァ〜。そんなんじゃねえならこはるちゃん、やっぱうち来ねぇ?なんかコイツ乗り気じゃねえみてェだし。」
「なに言ってるアルか腐れ天パ。こはるちゃん来てくれたら嬉しいけどどうせお前まともに給料出せないネ。」
「そうですよ銀さん。僕たちだってお給料もらったことないんですから。こんなに美味しい料理を作れるのにこはるさんにタダ働きさせるなんて酷いですよ。」
「ぐぅッ……!」
思わぬところからの反論に顔をひきつらせる坂田さん。
「お前らどっちの味方なんだよ!銀さんいじめて楽しいですかコノヤロー!」
「私はこはるちゃんの味方ネ!」
「僕もです。」
「キイイイイ!」
そんな賑やかなやり取りを微笑ましく眺めていると、玄関のチャイムが鳴り、土方さんたちとは少し違うデザインの黒服を着た男が入ってきた。
「副長!車の用意できました!」
「あぁ。山崎。こちら、今日から女中として働いてもらう…」
土方さんが【山崎】と呼んだ男は私の方へ向き直る。
「はじめまして。桜井こはると申します。よろしくお願いします。山崎さん。」
山崎さんは、少し顔を赤くして、
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
と言って笑顔を見せた。
土方さんたちは引き続き桂さんの捜索にあたるらしい。
……まぁ、目の前に居るんだけども。