第1章 プロローグ
「む、確かにこれは美味い。こんなに美味いだし巻き玉子は初めてだ。こはる殿は料理が上手いのだな。」
「なんでてめーも食ってんだよ!!」
「確かにこりゃ美味いな!」
「ああ。マヨネーズかけたら更に美味い。」
「土方さんやめてくだせェ。せっかくの美味い飯が台無しでさァ。」
「うおおおおおおお!!!何しれっと一緒に食べてるアルか!!!その米も玉子焼きも全部私のネ!!」
「なんかもうツッコむのも面倒くさくなってきた…それにしても、こんなに美味しいご飯初めて食べ……こはるさん…?」
新八くんの言葉に皆が一斉にこちらを向く。
気が付けば私の目からは大粒の涙がボロボロとこぼれていた。
自分の作ったご飯をこうして「美味しい」と食べてもらえることがこんなにも幸せな事だなんて、ながいこと忘れていた。
「こはるちゃん、どうしたアルか?どこか痛いアルか?」
神楽ちゃんがティッシュを差し出しながら心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「っ…ごめっ……こんな、美味しそうに食べてもらえたの、久しぶりだったから……嬉しくて。」
ふと、幼い頃のことを思い出した。
仕事の忙しい両親が少しでも楽になるようにと夕飯を作った。
玉子焼きを作りたかったけど作れなくて、ぐちゃぐちゃになってしまった。
けれど、それを両親はとても美味しそうに食べてくれた。
両親はあの日のことを覚えているだろうか……