第1章 プロローグ
「すみませんこはるさん。いきなり料理作れだなんて。」
新八くんが台所の使い方を説明しながら申し訳なさそうに言う。
「ううん、こちらこそごめんね。でも、いきなりとても賑やかでびっくりしちゃった。あと、みなさん何だかんだ優しそうで安心したよ。ありがとう新八くん。」
新八くんは少し頬をあからめ照れていた。
***
どうやら、家電は元いた世界とほとんど変わらず、食材や食の好みもだいたい同じらしいので安心した。
坂田さんがお米だけは炊飯器で炊いてくれていたので、あとはおかずを何品か作ればいい。
冷蔵庫には、卵と味噌と豆腐とネギとマヨネーズしかなかったけれど。
「新八くん、だし巻き玉子にしようと思うんだけど、塩っぱいのと甘いの、どっちがいいかなぁ。」
「あー、かわいそうな玉子じゃなければなんでもいいです。」
そう言った新八くんはどこか遠い目をしていた。
なにか卵料理にトラウマでもあるのだろうか。
「ありがとう。じゃあすぐ出来るから、新八くんもあっちで休んでて。」
「あ、はい。じゃあすみません。お言葉に甘えて。なにかあればいつでも呼んでくださいね!」
新八くんがみなさんのところへ戻ったところでさっそく調理に取り掛かる。
まずはお味噌汁だ。
幸いだしの素があったのですぐに出来そうだ。
お豆腐を入れて、味噌をといて、小さく切ったネギを浮かべれば完成。
残ったネギはまた使えるように、小さなタッパーに入れて冷凍庫へ入れた。
だし巻き玉子は隠し味にマヨネーズを。
マヨネーズを入れることで冷めてもふわっとした美味しいだし巻き玉子になる。
味付けは甘めにしたので、焦げないように弱火でじっくり火を通す。
焼き上がったら巻き簾(す)で形を整えて、切り分ければ完成だ。