第1章 プロローグ
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新八くんの話によると、突然入ってきた3人の男性たちは真選組という警察関係の方で、顎髭の方が近藤さん、近藤さんに【トシ】と呼ばれていた目付きの鋭い方が土方さん、栗色の髪の少年が沖田さんというらしい。
警察なら話が早い。
私はせっかくなので真選組の3人にも同席してもらい、話をすることにした。
「あの、自分でも信じ難い話だとは思うのですが…」
私は、昨日会った老人のこと、そして、誰も知らない遠い世界で人生をやり直したいと願ったこと、目が覚めたらここに居たことを話した。
「と、いうことなんですけど、さすがに信じて貰えるとは思ってませんが…一応私がいたところの身分証明書がこちらです。」
財布から出した免許証を坂田さんに差し出す。
「名前は桜井こはる…生年月日、んな元号見たことねえな。住所も実在する地名ではあるが若干違う。でも免許証の形式は同じみてえだな。それに、偽物にしては物が良すぎる。」
坂田さんに差し出した免許証を覗き込みながら土方さんが言った。
「しかし奇妙な話だな。話を聞くようじゃ単純にタイムスリップしたわけじゃなさそうだ。てかこはるちゃんいくつなの?とても酒が飲める歳には見えねえんだけど。」
「あの、坂田さん。私別に酔い潰れてたわけじゃないんです。確かにコレ飲むつもりでしたけど。ちなみに年齢は25です。つい最近アラサーに片足突っ込んだところです。」
「マジでか。同世代じゃあねーか!」
そう言って驚く坂田さん。
そして、同じく驚きの余り固まってしまった土方さんの手から火のついたタバコがこぼれ落ち、坂田さんの頭に…
「熱ッッッ!!!なにすんだお前ェ!!!」
「悪ィ。手が滑った。」
「謝って済むなら警察なんざいらねえんだよ!!もう帰れよお前ら!!」
坂田さんは頭を両手で抑えながらヒーヒー言っている。
その様子がなんだか可笑しくて、私は思わず吹き出してしまった。
「ぷっ…ふふっ。ごめんなさい笑ってしまって。でも何だか羨ましいです。皆さん仲良しなんですね。」
「どの辺が?!どの辺が仲良し?!こはるちゃんの世界ではこんなデンジャラスな笑いが横行してるわけ?!怖ぇよ!!どんなヤバい世界だよ!!」
そう、坂田さんに突っ込まれながらも、少しだけ不安が和らいでいく自分がいた。