第1章 短編集
就寝時間を10分過ぎてやっと彼は戻れと言った
私は何も言わず御辞儀だけして寮に戻った
談話室から女子寮に戻り自分に杖を振る。
髪の毛を赤毛に変えた
声を変える薬を飲み
鏡で確認
「完璧」と言った声は自分の物ではなくなっていて
今、私はこの黒い片目にしか残っていない事を確認した
たまたまトイレに行こうと起きてきたルームメイトに髪と声の話をされたが、「イメチェンだよ」とだけ言って寝た
次の日いつもの地下室に言った
私が・・・彼女が笑うと彼も少し笑った
昨日から更に態度が変わったと思う
幸せそうな彼を彼女の目で見た
私は彼女らしく振る舞う
あの日から彼の雰囲気が柔らかくなったと生徒から噂された。グリフィンドールの減点も減ったと言う
そう、私が彼女の代用品になれば
彼は形だけでも私を愛してくれる
黒い目は見てくれないけど、それでもよかった。
それでも、時々心臓が握り潰されるかと言うほどに苦しくなった
寮のベッドで沢山泣いた
ずっと泣いていたら涙は涸れて出なくなった
十分な筈なのに、それ以上を求めてしまう自分を戒め彼の元へ通った
私は彼女だ
なりきってやる
卒業式を迎えた
今も私は赤毛。黒い目を隠し、隣の彼を見ている。
その半年後、私はスピナーズエンドに住んでいた
彼と結婚した。傍目からすると幸せな家庭に見えるだろう。
彼女の目を見て、彼女の名前を呼び、彼女に微笑む彼に私の心で微笑み返す。
私は彼を愛しています
彼は彼女である私を愛しています
幸せです
Happy End!