第1章 短編集
=綺麗でした、憎いほどに。=
森に居る
さっきまで家にいたのに
片方の視界が悪い、いや見えない
片目に手を伸ばすと眼窩に有るはずの物がなかった
痛みも無い
でも見えない気持ち悪さ
悲鳴も出なかった
気付くと、気持ち悪い生物を見るような目で此方を凝視していた黒が見える方の片目に写った
見たことがある、私はこの黒を知っている
目の事が一瞬で消えた
何度も見て何度も恋い焦がれた人物が目の前に居たのだから
しかし彼は空想上の人物のはずだ
セブルス・スネイプ
育ちすぎたコウモリと比喩された言葉が一瞬にして頭に走った
ぼーっと彼に見とれていると手首に痛みが走った
彼に痛いほどに手首を掴まれていた
そして、ダンブルドアの居る校長室に連れられた
ほとんど分かっていない事情を話した
ダンブルドアは、最近頻発してる魔法使いの誘拐事件のせいだろうと言った。その時に身体の一部、つまり私は目を奪われただろうと言う。
戻る前に裁判で証言をする事になった。なんでも十年くらいかかるそうだ
元の世界に未練も無かったし、何より憧れの世界に居るのだからと私は二つ返事でYESと答えた
私はダンブルドアに魔力を分けてもらいながらホグワーツで生活すると言う事になった。
眼窩が見えるのは可哀想だと、眼帯も貰った。
森に居て、彼に連れられて、映画で見た人や仕掛けや部屋を見て話して。
この信じられない状況が続く中で逃げるかの様に過去に思いを走らせた
一巻から彼が好きだった
何巻でも彼の出る場面を繰り返し読んで繰り返し見た
最終巻を読んでリリーに嫉妬もした
"私の方が幸せに出来るのに"
何回も想ってきた人が私を乱暴に連れていくまでにも、自分でも思うほど恐ろしく冷静にその言葉を含んだ目で先生を見つめていた
先生は振り返りもしなかったけどね