第1章 短編集
必要の部屋には図書室よりも沢山の本棚が並んでいる・・・ような気がする。本棚を見るとすぐに納得した。マグル界の本もずらりと並んでいたからだ。
「必要の部屋ってすごいもんだねぇ・・・あ、ダリの本あるじゃん」
なまえは一通り本棚を見ると、端っこにあるソファーに寝転がった。そして、暇になったらいつも所持しているスケッチブックとマグル界の鉛筆を取り出しさかさかと絵を描き始めた。
先程のマグル界の本には、なまえの創作意欲を沸き立たせるような本が沢山あった。絵画から漫画まで様々な絵を見ることが出来た。
なまえがスケッチブックに描くのは大怪我をしている人だとか無残な死体だったりでとても万人受けするようなものではなかった。
「万人受けを狙って描くのはただのかまってちゃん。確かに認められたいってのはあるけど、やっぱり自分自身を認めてほしいよね。・・・認めてくれる人は居なかったけど。」
「僕は嫌いじゃないです」
後ろから突然声がした。
びっくりして振り返ると男子生徒がすぐ後ろに立って私の絵を見ていた。ローブには緑が見える、スリザリン生だ。整った顔の品性ある雰囲気を漂わせている。
「ちょ、え、あの、ここ」
「ここ、僕も使っているんです。・・・まさか人が居るとは思いませんでしたが。」
「お、お邪魔なら消えます・・・」
表情こそは強ばってたものの、折角一人になれるいい場所を見つけたのにと心の中では舌打ちをしていた。
「いえ、貴女も静かな所へ行きたいと願ったからここにいるのでしょう?邪魔だとは思いません、僕達も邪魔にならないように一人で本読んでおきますから。」
「え・・・っと、」
「レギュラス・ブラックです。」
「なまえ・みょうじです・・・」
「一つの部屋を共有する者同士、宜しくお願いします。」
あまりにも冷静な彼に圧倒されながらも、名前だけは聞きとっていた。
「ブラック、、ん?ブラック・・・?え、あ、ええ、あのブラック家ですか!?」
「ええ、まあ。あ、レギュラスでいいですよ」
信じられない、私の目の前にかの有名なブラック家の坊ちゃんがいるなんて。いや、でもあの品性ある雰囲気に納得のいく理由がついた。
呆気にとられていると「じゃあ、また絵見せて下さい」と言って彼は部屋の奥へ去っていった。