第6章 お出かけしましょう。
後ろから低く響くような声が聞こえた。
私も男達も後ろを振り向く。
そこには初めて会ったときと同じ、革ジャンにスパンコールのきらめくパンツをはいたカラ松が立っていた。
「カラ松さん!」
「大丈夫か雪実」
「遅刻しちゃってすいません」
「いや雪実が怪我なくて良かった」
ぽかんとしている男の腕を叩き落としてカラ松さんのそばに駆け寄る。
「俺らのこと無視してんじゃねーよ!」
「……誰だお前ら?」
私達が喋っていると、男は怒ったのかカラ松さんの胸ぐらに掴みかかる。とくに怯えた様子もないカラ松さんにますますイラついているようだ。
「しねよっ!」
胸ぐらを掴んでいた人とは別の男がカラ松さんを殴った。
「カラ松さんっ!」
「……?ああ!そうか、殴っていいんだな?」
ニコリと笑ったカラ松さんはまず目の前の胸ぐらを掴んだ男を殴った。
鈍い音と共に男は倒れ込んだ。そのまま起きあがってはこない。
「おい、まだ1発しか殴ってないぞ?」
ペチペチと倒れた男の頭を軽く叩いている。起きないとわかったのか、立ち上がって男達を挑発する。
「お前らはこないのか?」
「ふ、ふざけんなよ!!」
数人が同時に殴りかかってくる。
カラ松さんは避けようとせず、そのまま殴りかかってきたやつを殴り返していた。
何度もカラ松さんも殴られているが、痛そうにしている様子はない。
「こ、こいつ。もしかして赤塚の六つ子じゃね……うぐっ」
「弱かったな」
最後の1人を殴ったカラ松さんはこちらへと歩いてくる。
「さあ行こうか子猫ちゃん」
「……カラ松さん強いですね」
「あ?ああ、昔ちょっとな」
「助けてくれてありがとうございます」
「礼にはおよばないぜ」
倒れた男の真ん中で喋ってると誰かが通報したのか遠くからパトカーのサイレンがきこえてきた。
「やばいな逃げるぞ!」
「あ!ちょっと、カラ松さんうわっ!」
カラ松さんは私を抱きかかえた。
「少しだけだからちょっと待ってくれ」
そう言って、カラ松さんはパトカーから逃げるために私を抱えながら走った。