第5章 寄り道せずに帰りましょう。
ニット帽くんは学生証と私を交互にみている。
一分くらいそうしていたが、何か決めたようで私にニッコリと笑いかけてくる。
「ごめんねー雪実ちゃん。あまりにも知り合いに似てたから間違えちゃった!」
「いえ、気にしてないです」
「僕の名前は松野トド松。よろしくねっ」
よろしくする気はないのだが。おい、誰が同じ席に座れっていったよ。
そんなことよりケーキはまだだろうか。
「そういえば雪実ちゃん、さっき何松か聞いていたよね?兄さん達と知り合いなの?」
「(赤パーカーとは)知り合いではないです」
「へー。知り合いじゃないけど、あったことはあるんだ?」
ニコニコと笑いながらトド松さんは話をきいてくる。
「公園であk、おそ松さんと少しだけお会いしました」
「おそ松兄さんか……、変な目にあってない?大丈夫?」
「大丈夫、でしたよ…?」
投げて気絶させたから大丈夫です、とは流石に言えない。
「そっか~、気をつけてね!あ、そんなことよりLINEやってる?交代しようよ!」
何に気をつけるのか、なんて聞かない方がいいかもしれない。
あの赤パーカーに近寄らんどこ。
考え込んでいたらいつの間にか連絡先交代していた。こわい。