第5章 寄り道せずに帰りましょう。
そして数日後、面接を終えた。後日、連絡するらしい。
シフトなどの細かい話もしていたからとりあえず落ちることはなさそう。
家に帰る途中に、小さなカフェを見つけた。
コーヒーの香りが外まで漂ってくる。いい匂いだ。
その匂いに釣られるように私はそのカフェにはいる。中は、懐かしい感じがして凄く落ち着く。窓から入る日差しがとてもあたたかい。
「おや、いらっしゃい」
初めてのお客さんだね、と店員さんに言われる。
「来た人のこと覚えてるんですか?」
「もちろんだよ。だいたいのお客さんは常連さんしか来ないからねぇ」
ふふと笑う店員さんは凄く美人である。
話しながら席に案内される。
ごゆっくり、と声をかけて店員さんは中へと引っ込んでいった。
席につくと机に置かれていたメニューを開く。
ケーキは意外と種類があって、どれも美味しそうで悩む。結局、悩んだ結果、今日のオススメにした。
何が出てくるんだろう。
ケーキを待っているとカランカランと、ドアのベルが鳴る。
お客さんのようだ。
「久しぶり~。ここのケーキ美味しいから久々に来たよー!」
男にしては高めの声だなー、と思いつつその男をみる。ニット帽をかぶって、ニコニコと笑っている顔は、見たことのある顔だった。
こちらが見ていることに気づいたのか、相手もこちらに気づく。
「あれ、チビ太?また美女薬使ってるの?」
「何松さんか知らないですけど私はチビ太じゃないです。」
「いやいや!どうみてもチビ美じゃん!?」
ため息をつきつつ、学生証をとりだし、相手の前につきだす。
「は じ め ま し て。春川雪実と申します」
にっこりと笑って、自己紹介をしてさしあげた。