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短編集〜猫達の茶番劇〜

第1章 惚れ薬


「それはお気の毒に……。」
リムが苦笑いしながら言うと、ヨルも苦笑いする。
「まあ、慣れっこなんですけどね……って、姉上。準備できたんですね。」
ドアから出てきたホタルに、ヨルはそう声をかけた。
だが、
「……私の前に立つな、汚らわしい。」
「っ……!す、すみません、姉上。」
こっ、こわい……というか、この二人は姉弟なんじゃないのか……!?
姉弟同士とは思えないただらなぬ雰囲気に、リムは凍りつく。
リムが驚きで固まっていると、ホタルがスタスタと近寄ってきた。そしてリムを押しのけ、エレベーターに乗ってさっさと行ってしまった。
残されたリムとヨルはしばらく動けずにいたが、ヨルが口を開く。
「……僕らも、行きましょうか、リムさん。」
「え?あ、はい。そうですね……。」

エレベーターを待つ間。二人の間には沈黙が続く。
耐えかねたリムが、さっきからずっと疑問に思っていたことをヨルに問う。
「あの、ヨルくん……ホタルさんとは、いつもあんな感じなんですか?」
「………はい。」
「でも……二人は姉弟なんですよね?なぜ、そんなに冷たく……。」
「姉上は……僕の事が嫌いなんです。」
少し俯きながら、ヨルは言葉を続ける。
「僕は、一族の中で一番弱いし、甘ちゃんです。でも……族長の長男だっていうだけで姉上より地位が高くなっているんです。姉上の方が、力だって性格だって……族長に相応しいのに。」
悲しそうにそう語るヨル。
「ヨルくん……。」
「でも、どんなに嫌われようが、避けられようが、僕は姉上が好きなんです。だから……姉上に認めてもらえるように、修行中です。」
ニッコリ笑いながら言うヨルを見、リムは健気だなと思い、思わず頭を撫でる。
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