第2章 過去話 アヤカ
『それでも、貴方は出ていかなければならない。』
「どうして!?」
『そこは生と死の境目、まだ間に合う。戻って来なさい!』
ゴッと強い風が吹き荒れた。
「っ!」
風に押されてバランスを崩し、少女は島から足を踏み外した。そして、そのまま遥か下へと吸い込まれるように落ちていく。
悲鳴を上げ、少女は気絶してしまった。
目が覚めると、天井が見えた。
…………?
天井?と言うことは、ここは何か、建物なのだろうか?
自分に家などない。
ではここは何処だ?
と、足音が聞こえた。
瞬時に跳ね起き、構えた。
木製のドアを開け、入って来たのは、女性だった。
銀色の毛に、銀色の瞳の美猫。ひげも毛も整えられていて、それだけで少女とは立場が違うことを表していた。
彼女はクッキーとお茶の載ったトレーを持っていた。
「起きたのですか?お腹が空いているでしょう?良かったら、食べて下さい。」
そう言って、少女の近くのテーブルの上にそれを置いた。
少女はざわざわと自分の背中の毛が逆立つのを感じた。
その睨み付けた目は、銀色の毛に向けられている。
銀色の毛。
『邪魔だ。』
『死んでしまえ。』