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短編集〜猫達の茶番劇〜

第1章 惚れ薬


二人きりになったホタルとヨル。
沈黙が続く。
先に痺れを切らしたのは、意外にもホタルだった。
「………貴様はまだ私に用事があるのか?いい加減、視界から消え………。」
しかしその先には続かなかった。
ヨルが、小さな声で何か言ったのだ。
「………どうして。」
もう一度、今度ははっきりと言った。
「…………なんだと?」
今まで自分に意見などしたことがない弟が放った、意外な言葉に、ホタルは眉をひそめた。
グッとヨルが拳を握り締める。
「どうしてっ………こんな事をしたんですか!」
「………ただやりたかったからやった。それだけだ。」
「何でですかっ!?どうしてそれだけの理由であんなに酷い事が出来るんですかっ!?皆さんは、僕達みたいな______」
「私と貴様を一緒にするな。」
「______!」
ヨルの必死の訴えにも動じないホタル。
「私は誇り高き夜明族。貴様みたいなぬるいやつと一緒にするな。長男だからといって、良い気になるな。クズが。」
しかしヨルも譲らない。
拳を更にきつく握り締める。圧がかかった掌から血が滲み出る。
「僕はっ……!僕は一度もそんな風に考えた事はありませんっ!ただ、姉上に好かれたかっただけだっ……!!」
涙をこぼしながら、ヨルはまくし立てる。
「それに、僕らみたいな闇の一族の者にもっ……あの猫達は普通に接してくれた!いつも蔑まれ、忌み嫌われていた僕達を!なのに………!なんで姉上は心を開こうとしないんですかっ!?______」
「黙れ。」
「_____そんなだから_____」
「黙れ。」
「_____姉上は__」
「黙れと言っているだろう。」
ホタルの意思を無視し、ヨルは次の言葉を放った。
「心が闇に囚われたままなんだっ!!」
言い切ったヨルは、肩で息をする。
腕で涙を拭い、ホタルの方を見る。
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