第9章 夏休み
スパーンッ!「たっだいまー!」「ひぇっ!?」
襖がものすごい勢いで開き、私は飛び起きる。入り口に立っていたのはおそ松くんだった。
「おー、やっぱここにいた」
「あ、お、おかえり…」
今ずっと彼のことばかり考えていたので、実際目の前にすると妙に気恥ずかしくなってしまい、愛想笑いでお茶を濁す。
一方彼はなぜかそんな私を上から下までまじまじと観察してきて、別の意味で緊張が走る。な、なんなのだろう。
そして、ぼそっと一言。
「……色気なっ」
「は、はぁぁッ!?」
はい、出ました。出ましたよ、彼お得意のノーデリカシー宣言!
「帰って早々いきなりそれ?!っていうか超失礼なんですけども!」
「いやだって彼氏んちに泊まりに来てんのに全身グレーのジャージ姿とか…引くわ〜」
「だ、だって家で着てるパジャマなんて恥ずかしくて持ってこれなかったんだもん!スウェットも持ってないし!」
「仮にスウェットでもどんぐりの背比べだよ〜鈴ちゃん。ないわ〜マジないわ〜萎えるわ〜小さい胸がさらに小さく見えるわ〜」
カチンッ「おそ松くん…歯、食いしばってくれる…?グーがいい?パーがいい?」
「ジャンケンなら俺負けないよん♪」
「ふざけるなぁぁっ!」
ドタバタドタバタ
「……ねぇ、なんか二階うるさくない?」
「せっかく母さんがプリン用意してくれたのに、おそ松兄さんいらないのかなぁ」
「俺が呼びに行こうか?」
「あー、いいんじゃない別に。本来の目的を忘れて彼女とじゃれ合ってる兄さんが悪い」
「あ、またやきもち」
「やきもちー?」
「はい黙れ四男五男」
***