第9章 夏休み
それから夕飯をご馳走になり、みんなが銭湯に行く時間になった。
「あれ、鈴は行かないのー?」
玄関でみんなを見送る私を見て、ジュッシーが首を傾げながら尋ねてくる。
「うん、私銭湯って苦手で。だからここのお風呂借りるね。さっきおばさんには許可もらったから」
「そーなんだ。じゃあいってきまーす!」
「いってらっしゃい」
みんなは個々に私に手を振って、外に出ていった。私も一緒に行きたい気持ちはあるけど、昔からどうにも銭湯とか温泉って好きになれないんだよね。
さてと、私もお風呂に…
「わ!」
Σ「きゃああっ!?」
方向転換しようとした瞬間、いきなり大声で驚かせられ、思わず叫んで肩をびくつかせる。
恐る恐る振り向くと、そこにはお腹を抱えて大笑いしているおそ松くんの姿が。
「あっはははは!さっすが鈴!ナイスリアクション!ははははっ!」
「お、おそ松くん!?あ、あれ銭湯に行ったんじゃ…というか笑いすぎ!」
「ははっ、ごめんごめん。だって鈴はうちの風呂に入るんだろ?俺も残るっきゃないでしょー」
「へ…?」
意味がよく分からない。なんでおそ松くんも…?
「あ、その顔分かってないな?ピュアだね〜」
「ピュアって……え、もしかして?」
一つの可能性が頭を過り、サーッと血の気が引いていく。い、いやいやいや、さすがのおそ松くんでもそれは…ありえないありえない。
しかし私の信頼は、彼の次の台詞によってあっさりと裏切られた。
「俺たち付き合ってんだしさぁ。ここは仲良く、一緒に風呂にはいr「おそ松くんの変態!!」ドカッ「ってえぇッ!?」
必殺・スネ蹴り。彼氏といえど容赦はしないんだから!
「ひ、ひどいよぉ〜…助けてぇ〜彼女がいじめるぅ〜…」
ふんぞり返る私の下で、彼はスネを押さえて悶絶する。痛そうではあるけど、なんだろう…泣き真似が非常に嘘くさい。
「おそ松くんを助けてくれる人はここにはいません!いいから早く銭湯に行きなさい!」
「ちぇ〜……ガードかったいなぁ」
「な・に・か・い・っ・た?」
「別にぃ〜?」
スネを撫でながら立ち上がり、彼は玄関に向かう。あれ、意外に素直。