第9章 夏休み
パキッ
「…え?」
「はい、イッチー。あーん」
「!!?」
私はポテチを半分に割ると、片方をイッチーの口元に持っていく。
「な、なな、何してんの…!」
「いらない?」
「そうじゃなくて、あーんとかバカなの!?」
「おそ松くんによくしてるよ?」
「だからあいつと一緒にするなっての…!」
狼狽えるイッチーを見てると、なぜか加虐心のようなものが沸き上がってくる。いつも冷静沈着だから余計かな。
「ほらほら、あーん」
気分が乗ってきた私は、ニコニコしながらさらにポテチを押し付ける。ふふ、困ってる困ってる。
「……」
パリッ
「!えっ」
鎮まったかと思った、次の瞬間。彼が口を開けてポテチをかじった。
手を離せばいいのに、まさか本当に食べてくれるとは予想してなくて、ポテチを持ったまま呆気に取られてしまう。
その間に、彼はポテチを完食し…最後に私の指をぺろっと舐めた。
「…ん、しょっぱ」
Σ「ぴゃあっ!?」
え、ええぇ!?い、イッチーが、イッチーがゆ、指、指舐め…ッ!!
「ああ、ごめん…色似てたから食べそうになった」
「な、なななっ!!」
わ、笑ってる…!不敵な笑みを浮かべている…!これ絶対確信犯だ!わざとだ!
今度は私が狼狽えてしまう。し、仕返しされちゃった…次からはやり過ぎに注意しないと…!
「…あんたってさ、いじりまくって自爆するタイプだよね」
「仰る通りでございます、はい…以後気を付けます…」
「ポテチ食べる?もう一袋あるけど」
「けっこうです!」
とにかく今は、心を落ち着けたい…!