第9章 夏休み
バーベキューを終えてみんながデザートのアイスを食べている中、私は1人で片付けをしているチョロりんに気付いて声をかけた。
「チョロりん!私も手伝うよ」
「え」
調理器具をまとめていた彼が、驚いて私を見る。
「何からやればいい?それカバンに詰めよっか?」
「あ、いや…別にいいよ。気持ちは嬉しいけど、俺に構ってたら君の分のアイスなくなっちゃうよ」
「大丈夫、おそ松くんに確保してもらってるから!」
それでもチョロりんは難しそうな顔で、なかなか首を縦に振ってくれない。私はひとまずまだ手がつけられていない紙皿やコップなどのゴミ類を片付け始めた。
「だからいいって言ってるのに…みんなのとこ戻りなよ。俺がやっておく」
彼はため息をつきながら私に近付き、ゴミ袋を奪った。
「あ!もう、返してよチョロりん!私がやる!」
「アイス食べてきなってば」
「チョロりんだって食べてない!」
「俺は後ででいいの」
「取られちゃうよ?」
「うぐ…」
一瞬口をつぐんだ隙を狙い、素早くゴミ袋を奪い返す。
「ちょ…!」
「ねぇチョロりん。二人でやった方が早く終わるでしょ?たまには私のことも頼ってほしいな」
「…っ…」
彼はようやく観念したのか、くるっと背を向けて片付けを再開する。うーん、なんだかいつも以上にピリピリしてるような…気のせいかな?
さっきの喧嘩が後を引いてるってわけではなさそうだけど、なんでこう、チョロりんだけは私に冷たいんだろう。
仲良くしたいし、してるつもりなのに、彼から話しかけてくれることがほとんどない。だからといって私から話しかけても今みたいに迷惑そうにされるだけ。
メッセージを送ってみても会話が続かず、必ず彼から「おやすみ」と別れの言葉を切り出される始末。
嫌われてるのかなぁ、私…
「……ごめん、鈴」
「…え?」
チョロりんがこちらに背を向けたまま、ぽそりと呟く。あ、謝られた…?