第9章 夏休み
イッチーから助けを求められて、私とジュッシーが出動した…ところまではよかったんだけど、ヒートアップしたおそ松くんたちにはやっぱり敵うわけもなく…
結局しびれを切らしたチョロりんがおそ松くんにげんこつを食らわせて事なきを得ました。なんだかんだ末っ子に甘い三男…まぁ場が収まったし、一件落着だね。
「おそ松くん、頭大丈夫?」
すっかり拗ねてしまい、怒りのやり場がないのか水切りに精を出すおそ松くんに近付き、声をかける。
「…んー?どうせ俺はバカですよーだ」
「そっちの頭じゃなくて。たんこぶできてない?」
「できてたら何?鈴が介抱してくれんの?」
彼が勢いよく投げた石が、水の上を跳ねる。向こう岸まではさすがに届かずに、途中で沈んでいった。
「撫で撫でくらいはしてあげるよ?」
「……」
あれ?半分本気で言ったのに、食いついてこないな。
「あーあ。やっぱ二人っきりがよかったなー!」
ぐーっと伸びをして、おそ松くんは地面に寝転がる。石とか痛くないのか心配になったけれど、さっきまでのぶーたれた顔はもう戻っていたので、そこは安心した。
「む、デートに誘い忘れてた人がそれを言っちゃう?」
「それ蒸し返すなよ鈴〜。俺も悪気はなかったんだって!」
そう、彼は単に忘れてただけだった。理由としてはテスト結果が散々だったのと追試やら特別課題やらからくる精神的ストレス…って、夏休みの始めに本人はさぞ辛そうに語ってくれたけど、どう考えても自業自得だよね?!もう許してあげたけど!
二人っきり、か…でも今回はせっかくイッチーが誘ってくれたバーベキュー。みんなと遊ぶのはこれが初めてだし、今はとにかくめいっぱい楽しみたい。
後ろでは他のみんながバーベキューの続きをしていて、私も早く混ざりたいんだけど…彼を残すわけにもいかないし、どうしたら機嫌直してくれるかなぁ。
「鈴、起こして」
「へ?」
頭を悩ませていると、彼が突然そんなことを言って私に向かって両腕を伸ばしてきた。
…つまり、引き上げろと?普通彼女にそんなのねだりますかね…
「はーやーくー」