第8章 葛藤
【一松side】
いつものように保健室のベッドに寝転がりながら、僕は担任からもらった成績通知表を開く。
中間テストの順位は、っと…あ、1位だ。
それだけ確認し、カバンの中に無造作に突っ込む。教師の講評とか興味ないしね。
次は期末か…テスト範囲も狭くなるし、この調子で適当に頑張ろ。
「失礼しますっ」
…ああ、やっぱり来た。
最近はもう、あいつが来るのが当たり前になってる。というか来そうだな、と思った時に必ず来る。
女友達とでもいればいいのに、ほんっと物好き…
「イッチー!何位だった?!」
「金メダル」
「ぐっふ!おぉう…」
いやなにそのリアクション。それと相変わらずカーテン開けるの容赦ないな。
「さ、さすがイッチー…わたくしなんぞ足元にも及びませぬ…っうぅ…っ」
「泣くな、めんどくさい」
「でも!見てください一松様、私の順位!一学年208人中100位!なんかいいことありそうじゃないですか?!」
「キリいいだけじゃん、その自信と根拠はどこからくんの」
「ギリギリ上から数えたほうが早いし!」
「はいはい」
こんな感じのゆるい会話ももはや毎日の定番。
別に苦じゃないからいいけど、静かだったあの日常は当分戻ってこなさそうだな…。
「…で?報告しにきただけ?」
「いえいえ、まさかそんな!改めてこの間のお礼をしにきたの!」
「…はぁ」
この間?僕なんかしたっけ。
「イッチーが勉強教えてくれて追試を無事に乗り切ることができたから、そのお礼!あと、できれば期末に向けてまた勉強付き合ってもらいたいから、今のうちにヨイショしておこうと思って!」
「おま…はっきり言うな」
全く…そういうのは思ってても口に出さないもんだろ。嫌味に聞こえないのがまたムカつく。
ま、こいつらしいか。
「お礼って?」
「うん、あのね」
椅子に座り、彼女は持っていたショッピングバッグから丁寧にラッピングされた袋を取り出す。
「これ、イッチーにあげる!」
少し細長めで、紫のリボンが巻いてある。どう見ても誕生日プレゼントか何かで使うようなそれに若干驚きつつも、僕は素直に受け取った。