第8章 葛藤
一体何が入っているのだろう。大きさのわりにはやけに軽い…
「…ありがと」
「うん!(わくわく)」
「………」
え、開けろってか?なんかわくわくしてるよこいつ。
プレゼントとかもらい慣れてないからどう反応すればいいか分からない。てか勉強教えたぐらいで見返り半端ないな…これが常識なのだろうか。
彼女のキラキラした視線に耐えられなくなり、僕はリボンをほどいて袋を開けてみた。
すると中には…
「……え、何コレ」
「ドライフラワーです!」
「カリフラワー?」
「ドライフラワー!」
あー…なんか聞いたことはある。その名の通り、花を乾燥させたやつ。
袋から取り出して、まじまじと眺めてみる。見たこともない黄色い花だ。花束のように何本か束ねてある。
花には特別興味はないけど…ふぅん、なんだか新鮮だな。
「あんた、こんなの作れるんだ」
「案外簡単なんだよ。私の場合はお母さんが趣味でよく作ってたから、見よう見まねな部分もあるんだけどね」
「ふぅん…」
そういえばこいつ、前花が好きだって言ってたな。図鑑持ち歩いてるくらいだし、こういう趣味があんのも納得。
「ただ、それ去年作ったやつなの。今年のはこれからゆっくり作ってく予定だから間に合わなくて。代わりといったらなんだけど、一番お気に入りのを持ってきたんだ」
「…これ、なんの花?」
「ムギワラギクっていうの。イッチーの誕生花なんだよ」
「…誕生花?」
なんだろう、さっきからどんどんメルヘンな世界に入ってってる気がする。僕の管轄外であることは間違いない。
僕が首を傾げると、彼女はカバンから再びあの図鑑を取り出した。数ページ開いて、ある場所を指差す。
「ほら、これがムギワラギク。ちょうど今の時期に咲くキク科の花だよ。で、誕生花っていうのは、366日それぞれ誕生日ごとに最も縁のある花のこと。イッチーは5月24日生まれだから、この花なんだよ」
「…へぇ…」
…少し、面白いなと思ってしまった。