第2章 哀しみの色
とりあえず居間に入る。チョロ松とトド松が並んで座り、テレビを見ていた。
「ただいま」
「ん?ああ、おかえりカラ松」
「カラ松兄さん…」
二人が振り返って俺を見る。トド松の方は先のやり取りもあってなんだか気まずそうだ。
俺はちゃぶ台の側に腰を下ろす。そして二人が聞いてくる前に話を切り出した。
「鈴のことなんだが…もうそろそろ退院できるかもしれないらしい」
「「!」」
案の定、二人は喜んでいいのか困ったような表情を浮かべている。
俺はポケットからタバコを取り出し、ライターで火をつけた。
いつもなら「ここで吸うな」と怒るはずなのに、2人は何も言わない。それだけ¨退院¨の衝撃が大きいのだろう。
「…それ、さ。おそ松兄さんと一松には言うの?」
チョロ松の質問に、トド松が俯く。俺もすぐには答えることができない。
おそ松も一松も、普段は滅多に感情を表に出さない。…いや、語弊があるか。喜怒哀楽はあるものの、¨彼女に対する感情¨だけは出そうとしないんだ。
だからこそ、伝えるのを躊躇ってしまう。俺たちにとって、二人が¨なんでもないフリ¨をするほうが辛いのだから。