第2章 哀しみの色
「ただいま」
「あ!おかえりなさい、カラ松兄さん!」
家の玄関に入ると、靴を履いている十四松がいた。
野球のユニフォームを着ており、壁際にはバットが立て掛けてある。
「素振りしに行くのか?」
「そうだよ!兄さんは病院に行ってたんだよね。鈴、元気にしてたー?」
「ああ。もう少しで退院するかもしれない」
「マジっすか!よかったーっ」
まるで自分のことのように喜ぶ十四松。ある意味、俺たち兄弟の中で一番純粋に彼女と友人として付き合っていたからかもしれない。
「じゃあ僕、河原に行ってくるよ!退院の話、みんなにもしてあげてね!」
「…そうだな」
バットを担いで外に出ていく十四松を見送り、俺はため息をつく。
みんなにも、か…