第7章 傷
同時に、頬に熱が集まってくる。なぜだか分からないけど、心臓の鼓動も早くなっている。
ど、どうしちゃったんだろう私。イッチーの顔、まともに見れない…。
「…ねぇ」
「っな、なに?」
「なんとか言ってよ。…恥ずかしいだろ」
「あ」
さっきからずっと黙ったままだったのに気付き、私は首をぶんぶんと横に振って気持ちを切り替える。そうだ、私も謝らないと。
「ううん、確かにびっくりしたけど、イッチーは謝らなくていいよ。だってイッチーが怒ってあんなことしたのは、紛れもなく私のせいなんだし。…本当に、ごめんなさい」
素直に頭を下げる。といっても座りながらだけど。
「……理由、分かってるの?」
「え」
「僕がなんで怒ったか…どうせ分かってないだろ?聞かないわけ」
「…それは…」
原因は私。きっと私が何か余計なことを喋ってしまったせい。それか、彼にしつこくしてしまったせいか。
私がなかなか切り出せずに迷っていると、彼は小さく息をついて立ち上がった。
「…もう帰ろう。こんな時間だけど、おそ松兄さんと待ち合わせしてたりする?」
「…え?う、ううん。図書室に来る前に、今日は遅くなるから先に帰っていいよって連絡しておいたの」
「ふぅん。じゃあ駅まで送るよ」
「へ?!」
き、聞き間違いかな?今送るって…
硬直していると、彼は少しだけ不機嫌そうに私を見下ろしてきた。
「さっさと片付けて。1人で帰りたいなら、別に無理強いはしないけど」
「!い、いえ、帰ります!一緒に帰らせてください!」
私は慌てて問題集やらノートやらをカバンに詰め込み、席を立つ。すでに彼は図書室の入り口まで歩き出していた。
イッチーと一緒に帰れる…
あの時はっきりと断られたのに、今回はむしろ彼から誘ってくれた。
自然と頬が緩んでしまう。少なくとも、嫌われてはいないんだ。
「…何にやついてんの」
「に、にやついてないよ?」
鋭い眼光で睨まれたため、なんとか真顔に戻し必死のフォロー。うーん、だめだ。効果なさそう。睨みが止まらない。
「…あんたって」
「うん?」
「…いや、なんでもない。行こう」