第7章 傷
「…い、イッチー!」
そう、目の前に現れたのは、この数週間避けられ続けてきた、私が最も会いたかった人物…一松くんだったのだ。
出会ったばかりの頃と変わらない気だるげな雰囲気を醸し出しながら、頬杖をついて私を見つめている。少なくとも不機嫌そうではない…かな?
そ、それよりも、なんで彼がここに…!全然気付かなかった…
「い、イッチー…ひ、久しぶり、だね?」
話したいことはたくさんある。というかありすぎて何から言えばいいか分からない。私はとりあえず無難に挨拶をしてみた。
「……久しぶり」
「!」
無視されない。なんでだろ?昨日まで避けられてたはずなんだけどな。
嬉しいから、まぁいっか!
「イッチー!あの、あのね、私!」
思わず身を乗り出して彼に詰め寄ろうとすると、彼はあからさまに顔をしかめ、迷惑そうな表情をする。
「うるさい。ここ図書室」
「あ…ご、ごめん」
注意されたのに、なぜか安心する。ぶっきらぼうな態度が、彼のスタンダードだからだろうか。
小声なら話しかけても大丈夫かな?と思い、再度口を開こうとすると、
「なんで勉強してるの、それ」
逆に彼から質問された。
「あ、これは…つ、追試がありまして…」
嘘をついてもすぐバレる予感がしたので、正直に打ち明ける。
でも彼は、からかいも笑いもしなかった。無表情のまま、私の手元にある問題集や教科書をじっと見つめる。
やがて、彼の口から信じられない台詞が飛び出した。