第2章 哀しみの色
「本当?ふふ、私はこの通りもう全然大丈夫なんだけどな。あ、担当の先生がね、もう少し様子を見たら退院の許可を出すかもしれないって言ってくれたの。退院したら、またみんなの家に行ってもいい?」
「!…あ、ああ」
―退院。
普通なら喜ぶべきだ。実際に彼女は¨あれから¨だいぶ回復している。…少なくとも、外傷という意味で。
しかし、精神面においては…
「うー、早く退院したいなぁ。それでまたみんなと遊びたい!カーくんと、チョロりんと、ジュッシーと、トッティ、それから私の5人で!今から計画を立てておくのも悪くないかも」
子供のように無邪気に笑う鈴。どれだけ仕草や性格があの頃と変わっていなくても、彼女の口から¨彼ら¨について語られることはない。
5人……違うだろう、鈴。あともう2人いるじゃないか。
そう言い出したいのをぐっと堪える。
肝心なのは、今を受け止めて、この先をどう生きていくかだ。そしてそれは、あの2人もちゃんと分かっているはずで、俺が口を出すようなことじゃない。
俺はただ…兄弟として、彼女の友人として、見守り続けるだけだ。
「…鈴。俺はそろそろ帰る。もうすぐ昼食の時間だろう?」
「あ、そうだね。カーくん、また来てくれる?」
「ああ。今度はチョロ松たちも連れてこよう」
「うん!楽しみにしてるね」
笑顔で手を振る彼女に見送られながら、病室を出る。
食事の時間だから気を遣ったというわけではない。
見舞いにくるのは別にいいんだ。ただ彼女の前で平静を装い続けるのは、今でもけっこうきつい。
一体いつになったら…俺たちは本当の意味で前に進めるのだろう。
あとどれだけの月日が経てば、彼女は…―
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