第7章 傷
ファミレスからの帰り道。手を繋いで駅までの短い距離を歩く。
「そういえば、そっちってもう中間終わったんだよな?」
歩きながら、おそ松くんが今思い出したように尋ねてくる。
「うん、終わったよ。そろそろテスト返ってくると思う」
「鈴はどうなんだよ、手応え」
「えっ!お、おそ松くんよりは絶対いいよ!」
「あ、ひっでー!俺と比べるとか卑怯だぞ、鈴ー」
セリフのわりには全然卑怯だと思ってなさそうに笑うおそ松くん。元から冗談で言ったつもりだったけど、ほんと毒気抜かれるなぁ。
「だっておそ松くん、赤点ばっかりなんだもん。むしろ赤点を免れた教科の方が少なくなかった?」
「まだ全部返ってきてないからそこはなんとも言えねぇけど、まぁな!学年ビリだったらどーしよー、なんつって」
「笑いごとじゃないでしょ、もう!進級できなくなっちゃうよ?」
「大丈夫大丈夫。つかまだ一学期の中間だよー?これからリベンジすればどうにでもなるって」
鼻の下を擦りながら呑気に笑う彼に、私は小さく苦笑する。恐れ知らずというかなんというか…ぶれないなぁ、おそ松くんは。
そんな話をしていたら、もう駅がすぐ目の前に迫っていることに気付く。
あ…今日もこれでお別れか…。
付き合い始めてから約2ヶ月。未だに駅前での別れは慣れない。
一緒に過ごす時間が楽しくて、離れがたいのもあるし…帰ったら1人だから、なおのこと寂しいのかもしれない。
かといって明日も学校だから、これ以上引き留めるわけにもいかないし…私の家がもっと近くにあったらよかったのにな。
「…おそ松くん、そろそろ」